作品にみる田舎

「南仏プロヴァンスの12か月」に見る田舎

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「南仏プロヴァンスの12か月」は世界的に大ベストセラーになり、「プロヴァンス」の名を一躍高めることとなったピーター・メイルの著書です。イギリスから南フランス・プロヴァンスに移り住んだ著者が、その暮らしぶりを綴った、という内容なのですが、田舎の人々や生活が目に浮かぶような文章で読むうちにドンドンと引きこまれます。

南仏プロヴァンスの12か月

グルメな田舎っぷりが凄い!

この本を読んで僕が最も引き込まれる描写は「フランス人のグルメっぷり!」です。

著者は「プロヴァンスでは石を投げればグルメにあたる。」と書いていますが、それももっともなことで、トリュフやフォアグラ、オリーブなどの日本でもおなじみな食材はもちろん聞いたことがないような食べ物まで、ページをめくるたびに様々な食べ物が記されてあります。

中でも素晴らしいと思ったのは、「マッソー風キツネのシチュー」の記述で、著者が猟犬を連れた農夫マッソーに聞いたキツネの調理法なのですが、

若いキツネを誘き出して、料理には用のない頭をただ一発で仕留めること。食べる肉の部分に散弾が入っていると、歯がかけて、腹痛を起こす危険がある。マッソーはここで口を開け、自分の歯が欠けているところを見せた。

(中略)

皮を剥ぎ終えた肉を冷たい流水に一昼夜漬けて臭味を抜く。水を切り、袋詰めにして夜干しにする。できれば霜の夜がいい。

翌朝、その肉を鋳物のキャセロールに入れ、血とワインをよく混ぜてひたひたにかける。ハーブ、タマネギ、ニンニクの塊を加え、一日二日とろ火で煮込む。(マッソーは、煮込む時間はキツネの年齢や大きさに変るのではっきりとは言えないと弁解した。)

以前はこれにパンと茹でたジャガイモを添えて食べたが、今はディープ・ファット・フライヤーなどの便利な道具があるので、ポム・フリットを付け合わせにすることもできる。

とマッソーは力説するのです。この後、この話はどうやら眉唾らしいと後にわかるのですが、それでもキツネの肉が食べてみたくなる描写じゃありませんか!

実際はキツネの肉はとても臭く、食べられたものではないらしいのですが、付け合せのポム・フリット(フライドポテト)なんかの小道具も信憑性を増すのに一役かっていますし、「できれば霜の夜がいい」という表現は詩的ですらあります。キツネのシチューの話が嘘にしても、おそらくマッソーはかなりの美食家でしょう。

この他にも、ウサギや猪などのジビエも登場し、食卓を彩る様子が鮮やかに描かれています。   プロヴァンスに暮らす人が食べる事に費やす情熱は相当なもので、食いしん坊の僕としても「やっぱ田舎は土地が豊かなんだから、恵みの食べ物を有効に利用しないと!」と思うわけです。嘉年をプロヴァンス並みの「美食の田舎」にしていきたいです!

しかし…僕は寝る前に本を読む事が多いのですが、この本を読むとお腹がすいてきて目が冴えるのでベッドからは遠ざけています。ホントに。

 

「こんな田舎で、退屈しないか?」

著者はパリの友人に「こんな田舎で、退屈しないか?」と言われた際、

私たちはただの一度として退屈を覚えた事がない。退屈している暇はない。フランスの田園生活は毎日が興味ある発見と楽しみの連続である。

と返しています。僕も全く同感です。退屈を覚えた事は一度もありません。おそらく、これからも退屈する日は来ないと思います。毎日が新鮮な発見と驚きで満ちています。多分それは外国の田舎でも日本の田舎でも変わらないと思います。

ともかく、「南仏プロヴァンスの12か月」で描かれている田舎は、自然の恵みが豊かで、それを存分に享受している人々の姿です。やっぱりそこに住む人々がその風土を存分に楽しまなければ、「行ってみたい田舎」にはならないと強く感じました。

 

※引用元:河出文庫「南仏プロヴァンスの12か月」ピーター・メイル(著)・池 央耿(翻訳)

 

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