畜産

プロフェッショナルの精神「売り物には紅をさせ」

更新日:

牛のせり市場に行った際に「すごいな」と思ったことの一つにほとんどの牛が汚れを落とし、キレイになっていたことがあります。

僕を市場に連れて行ってくれた上田さんは、市場に行く前日に牛を温水シャワー(冬だから温水じゃないと牛の体調が悪くなるそうです)で、汚れをヒヅメの先まで落としきってから市場の日を迎えていました。

市場に行ってからもブラシや濡れタオルでもう一度体の隅々まで汚れをおとし、せりに臨まれていました。

牛にブラシをかける上田さん

素牛のせり市場で牛を購入するのは肥育農家の方、つまり牛を見るプロです。肥育農家の人は「稼がせてくれる牛」であればよいわけで、骨格や尻の形、肉付きなどが重要で汚れがついているかどうかはそれほど重要ではないはずです。

それでも多くの繁殖農家さんが牛を隅々までキレイにします。

その事について上田さんは「売り物に紅をさせっちゅうことやな」とおっしゃいました。

笑顔の上田さん
↑笑顔の上田さん。(僕の大家さんでもあります)

 

売り物に紅をさせ

「売り物に紅をさせ」という言葉ははじめて聞いたのですが、インターネットで調べると「売る品物は品質の良さも大事だが、売れ行きがよくなるように美しく飾り立てよという教え」と書いてありました。

とはいえ上田さんがおっしゃっている事はそれだけでは無い気がします。というのも、相手はプロでありあくまで「稼がせてくれる牛」を探しに来るわけですから。

それでも売る寸前まで、きれいな状態に保つというのは畜産農家としてのある種のプライドなのではないかと思います。繁殖農家さんにとって、市場というのは自分の腕前を披露する場です。自分の能力を見られる場なので、かなり緊張する場です。上田さんは「そんな時、一見関係なさそうな部分でも隅々にまで精神を行き渡らせるべきだ」ということが仰りたいのではないかと感じました。

以前、ある野球選手(ピッチャー)の本を読んだ際、後輩の投手がインタビューで「あの投手は凄かった」と話していたのですが、僕はその理由に驚きました。

というのも、「投手としての成績ももちろんだけれども、そういう問題ではない。ボロボロに打たれてピッチャー交代する時、大体のピッチャーのマウンドは荒れている。しかし、あの投手の時はいつもとても綺麗だった。」という理由だったからです。

精神的に苦しい時でも隅々にまで気を配ることができる。それはとてつもない精神力が必要です。それを可能にするのは「職人魂」とか「プロフェッショナルの精神」ではないでしょうか。

おそらく上田さんもそのような職人としてのプライドは大事じゃないように見えるけれども、最も大事なものであるとおっしゃりたかったのではないかと思います。

上田さんの育てた素牛は、購入した肥育農家によって松坂牛になったり神戸牛になったりします。世界からも高い評価を得ている和牛はこのようなプロフェッショナルの精神によって生産されています。

-畜産

Copyright© いなかプラス , 2017 All Rights Reserved.